市橋晴菜「生命の木」
猪苗代町立東中学校 壁2面 キャンバス布4枚
土 顔料 アクリル絵具 キャンバス布
あじわう
地面にポトリと種が落ちた。
その種は鳥と旅をしてやってきた。
種は地中に潜り、根を出し、葉を出し、木になった。
太陽に照らされ月夜に歌い、木は上へ上へと葉を伸ばした。
ある日葉の裏から声がした。
「おーい、大きな木よ。葉っぱを一枚いただくよ」。
木は枝先の葉を小さな虫にあげた。
強い雨の日には、生き物たちは木の周りに身を寄せ合った。根には沢山の生き物達がひしめき合い、木から少しの養分をもらって生きていた。
そして、木もまた必要な養分を小さき者たちからもらっていた。
木はいつしか高くそびえ立ち、遠くの風景を見渡せるようになっていた。
しかし、根は深く、その場を動くことは難しいようだった。
木は、遠くに見える土地を見てみたくてたまらなくなった。
明け方、湖や森に想いを馳せていると、枝に渡り鳥がとまった。
渡り鳥は木にこう言った。
「そのおいしそうな実をわけてくれたら、私はあなたを遠くまで運ぼう」
木は嬉しくなってたくさんの実をつけた。渡り鳥はそれをついばんだ。
お腹を空かせた動物たちも喜び、それを食べた。
木は種となり動物たちによって遠くの地に運ばれた。木は身体中がたくさんの地に根づいてゆくのを感じた。
また種は芽吹く。どこか遠くの地の果てで。
ひと粒の種が一本の木になり、やがて生命の森となる。
豊かな森は私たちの中にある。
命はめぐり生き物達は寄り添う。
忘れてはならない。
生命の木が今ここに根づいていることを。
市橋晴菜
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ワークショップ「地中の生き物を描く」