浅野友理子「脈」

猪苗代町立吾妻小学校 図工室 W1020cm×D1278cm×H300cm 壁4面 天窓

アクリル絵具 水性ペイント 和紙 水干絵具

 

あじわう

 

 

吾妻の山々に自生する植物たち。壁面にはこの土地の人たちの営みに欠かせなかったいくつもの植物の姿を描きました。

 

そして、脈打つような赤い川が流れています。教室を取り囲む赤い川は、人々の中に流れる血であり、受け継がれてきたものそのものを表しています。川として描き始めた線と植物たちは、日々の出会いとともに変化をしながら、教室一面に広がっていきました。

 

春、山菜が芽吹きます。竹藪をかき分けると、根元にはたくさんの根まがり竹が生え始めます。ぐんぐんと成長しながら、食べられるときを待っているようです。

 

夏の終わり頃、子どもたちと一緒に川の源流を目指して歩きました。 野山を歩いてアケビ、コクワ、ヤマブドウ、三種類の木の実を拾いました。

 

秋にふたたびこの地を訪れ、蔓の採集に出かけました。アケビの実と葉を探して、蔓を辿ります。細い蔓は獰猛に樹木に絡みつき、地面にしっかりと根を張っていました。

 

柱には大きな一本の桑の老木を描きました。この辺りは昔、一面が桑畑でした。ようやく出会えた桑の木の前で、お蚕さまのための桑の葉そぎの様子を見せてもらいました。

すぐ隣には蕎麦畑が広がっていて、収穫間近のようです。その場所にはかつて人が住んでいて、水害によって集落ごと移動したということを知りました。この小学校のある集落もまた、そのときに移り住んだ土地なのだそうです。

 

土地のもつ様々な歴史や脈々と受け継がれてきた文化が、絡みつく蔦やどっしりとそびえたつ樹木の姿と重なり合います。

 

持ち運べる和紙には果実や種子、花々を描きました。種子は子どもたちの手で浮かべられた笹舟に乗って、赤い川の上をどこまでも、軽やかに進んでいきます。

浅野友理子

 

 

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ワークショップ「森の植物を描く」